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奈良三彩(さんさい)~前編~
灰褐色の粘土を用いた素焼きの器に、「緑・黄・白」の三色の釉薬(ゆうやく)をかけて低温で焼成(しょうせい)する国産の彩釉(さいゆう)陶器の一種です。飛鳥時代に唐よりもたらされた唐三彩(とうさんさい)の影響を受けて、奈良時代に作られるようになりました。
平城京やその周辺の限られた工房で製作されたと考えられ、畿内を中心に官衙(かんが)や寺院・墳墓・祭祀(さいし)遺跡・住居跡などの遺跡から出土している他、正倉院(奈良県)には、奈良三彩が57点収められています。出土する遺跡や正倉院の伝世品から、庶民の使う道具ではなく、祭祀や仏事といった特別な場で使われる道具、天皇や貴族といった位の高い人物が所有していた道具だったことが分かります。
当時、素焼きの器が主流だった国内において、釉薬がかけられた奈良三彩は異色の存在だったことがうかがえます。
次回の奈良三彩~後編~では、市内から出土した奈良三彩について見ていきます。
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