12月3日から9日は「障害者週間」です
社会全体で支え合おう
4月に障害者差別解消法が改正され「合理的配慮」の提供が義務化されました。今回は、障がいのある方と支援する4団体の方々に障がいのある方が日常生活で直面する困難なことを聞き、社会全体でどのように支えていけばいいのかを語っていただきました。
■合理的配慮って何だろう?
障がいのある人から、社会の中にあるバリアを取り除くために何らかの対応を必要としているとの意思が伝えられたときに、負担が重すぎない範囲で対応することです。
■活動の内容や、障がいのある方をサポートして感じたことを「座談会」で聞いてみました。
・あがむの会(精神障害者家族会) 工藤松子さん
・手をつなぐ育成会(知的障がい児者家族・支援者の会) 大部さつきさん
・地域活動支援センターファミール 山口明美さん
・障がい児者相談支援センター 八重樫(やえがし)譲さん
・市担当者
◇皆さんの活動内容を教えてください
(工藤)精神障がい者の家族らが集まり、話し合ったり、精神障がいを啓発したりしています。
(市)講演会など、年間でいろいろ活動計画を立てていますよね。
(工藤)啓発の意味を込めて、年1回誰でも参加できる講演会を企画しています。
(大部)私は知的障がい児と親や支援者がイベントを通しての交流や生活に必要な勉強会をしています。市役所のともしびショップ「むー」では職場体験を通して社会に出るためのサポートも行っています。
(山口)ファミールでは、精神障がいの方の日中の活動の場として、企業からの受注作業や、農作物や自主製品の販売をしています。障がいのある仲間の居場所として、互いに交流をしたり、心配事の相談に乗ったりしています。
(八重樫)障がいのあるご本人や家族の方の相談対応と障がい福祉サービスの事業所「障害があっても障害がなくても共に生きる綾瀬を創る協議会」を通して医療、教育などのネットワークづくりを行っています。
◇障がいのある方の暮らしの現状は
(工藤)精神障がいは外見から分かりにくく、理解しにくい病気です。親も理解できなかったり、認めない方もいますが、ご本人が一番つらいことを理解する必要があります。親から変わらないといけません。
(市)表に見えない障がいだからこそ、やはり理解してもらうことが大事ということですね。そこを変えるために啓発していくことが必要ですね。
(大部)知的障がい者はどんどん外出しているように感じます。ただ、知的障がい、ダウン症、自閉症といっても、障がいは一人一人違います。それをまだ社会から理解されていないように思います。
(市)知ってもらうために話し合うことが必要ですね。
(山口)地域作業所時代から考えると、利用者へのサービスが増え、職種連携では手応えを感じます。連携できる人も増えました。ただ、地域格差や特性があります。
(八重樫)バリアフリー法が施行されて、エレベーターや障がい者用トイレなど、物理的な変化は大きいですが、一方で周囲の視線や偏見といった、心のバリアはここ数十年あまり変わっていないような気がします。
◇合理的配慮の義務化をどう思いますか
(大部)ある大型電気店が感覚過敏の人のための営業時間を設け、マスコミがそれを報道しました。また、金融機関から「合理的配慮にはどう対応したらいいのか」と質問が寄せられ、常識的な専門用語でも対話の中で分かりやすく説明してほしいとお伝えしました。対話の大切さとその出発点が明確になりました。
(山口)画一的な線引きやルールがあれば分かりやすいのですが、そもそも障がいは多様です。合理的配慮とは障がい者への何か特別な行為やサービスがあてはまるものではありません。対話と相手を理解することで全てが始まると思います。
(八重樫)障がい福祉サービスの充実とともにプロに任せるという風潮に進みがちですが、障がいのある人もない人も互いに地域住民です。まず、知り合って、関わって、お互いに理解すること。そのためには障がいのある人が声を発することが大事だし、そういう場を増やさねばなりません。
◇これからに向けひとこと
(山口)今回、お二人の利用者の方にプレッシャーの中で意見(下の「当事者の思いを聞いてみました」)を出してもらえたことに感動しています。
合理的配慮はこうした対話の積み重ねが必要です。こういう場をつくることはこれからも大切だと思います。
(工藤)将来の不安要素が多い中、家族会も高齢化が進み、どう続けていくかが悩みです。子どもたちのためにも若い方の参加が増えてほしいです。
(八重樫)福祉サービスが増える中で、それらのサービスを受ける人の権利擁護と、その人らしく生活ができるように、綾瀬という地域全体でサポートする支援力を高めていきたいです。
(大部)お店に、障がいがあってもなくてもみんなが来られて、たまたま障がいのある人が働いている。「一人一人が違う」ことを理解し「私はこれが不得意です」「これができます」といえる社会。「障害があってもなくても、みんな一緒」。そういうまちになってほしいです。
(八重樫)そうですね。まず知り合う、対話をする、そこから始めていかなければいけないと思います。